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Pianist 早川奈穂子 Official Blog

harmonie des fleurs * ハナのハーモニー

ツェルニーについて

Categorytravail * お仕事 instruction * 指導
審査やレクチャーの時、ツェルニーについて質問をよく受けますので、
今日はこちらでもまとめておこうと思います。(^-^)
大変遅くなりました。



数年前、日本では脱ツェルニーの流れが巻き起こっていましたが
ヨーロッパやロシア・アメリカでは実はほとんど使われていない練習曲で、抜粋でするくらい、と先生達より聞いています。
ロシア人ピアニストは、小さい頃使っていた練習曲をたずねても
「ツェルニー?あれは早口言葉(脳~指の反射)の練習にいいけど、全部なんてしてないよ。バッハをとにかくした。」
とのこと。

技術は、特定の教則本を使うというよりも、芸術的な、実際のコンサートでも使える曲を弾いていくことで身につけていっている方法が主流なのですね。
ですので、指でカタカタ弾き意味のない音を出すのではない、とても実践的な、音楽的な技術が身につきます。


日本でこんなにツェルニーが広まったのは、戦時中日本でドイツの音楽しか奏でてはならなかった流れもあるのでしょう。
そんな中でベートーヴェンがひろまり、古典の作品を弾くための練習曲、ツェルニーも広まったのでした。



私自身としましては、ツェルニーはひとまず30番までは、どの生徒にも使っています。

ツェルニーは、5本の指の運動神経の刺激だけでなく、
音階やアルペジオがシンプルな形ばかり続くことによって、読譜力も付きます。

音符を1つ1つ見るのではなく、4つ、8つ、16個と
楽譜を先の方までまとめて見る力が付いてくれます。
大まかな形で判断する、視覚的な訓練にとても良いです。

また、和声進行や転調も極めて単純でありますので、予測する力も付き、
和声の基礎的な感覚を養ってくれます。
ですので同時に、和声分析もしてゆきます。

その後の曲にでてくる魅惑的な和音や転調は、そのシンプルさを知っていてこそ、驚きのあるものとして認識されます。
ツェルニーには決して出てこないモーツァルトの音の使い方を、「素敵」であり「特別な」ものとし認識するには、シンプルな形を知っていてこそです。

そういう意味では、
ジャズやポピュラーのような和音も盛り込んだ導入教材もありますが、
私はやはり、オーソドックスなものから入った方が良いと感じています。


そしてその後40番・50番は、人それぞれで使い方を変えています。
運動神経や反射力、読譜力の様子を見ながら、
たくさんしていく子もいますし、抜粋ですませる子もいます。
抜粋で使う場合は、必ず古典のソナタや他のエチュードを使います。

ツェルニーは良いところもあるのですが、ツェルニーでは学べないこともたくさんあるのです。
黒鍵の多い調が少ないことや、オクターブや重音・和音の練習曲も足りません。
また、言語にも通じるような音のイントネーションもほとんどありませんので、音をただ揃えて羅列して弾くことに慣れてしまいますが、
実際の作品では、ドシラソ、とロボットのように音を揃えることが大事なのではなく、1音1音コントロールされたイントネーション(抑揚)が必要です。
ツェルニーは必要なことをクリアすればなるべく早く卒業し、古典のソナタや違うエチュードをしたほうが、実際の演奏技術に結びつくことを実感しています。


そして、ツェルニーは、演奏会でプログラミングすることはまずないですよね、、
私は一度も見たことがありません。(笑)
将来ピアノを弾いて行く人は、ツェルニーの代わりにもう少し内容のあるエチュードや古典のソナタをたくさん弾いておいた方が良いと私は感じています。

ソナタは演奏会のレパートリーになるだけではなく、
音楽的に、構成や転調・1音1音に込められている音楽性や表情、メッセージが盛りだくさんであり、
ツェルニーにはない、大きな衝動を心に生んでくれるからです。

そして、演奏に一番大切な、技術と表現、「全てを同時にする」脳の実践的な訓練は
そのような芸術的な作品でなければ、深い所まですることができません。

ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、
世に名の残っている方たちの作品には、どんな小さな作品にもその天才があります。
それに触れていると、何かしら心に「魅力」が残り、感性が育まれ、音を指だけで弾いて素通りすることも少なくなるからです。
そして感性豊かな子どもたちは、言葉がけをすればちゃんとそれに反応します。
心に何かが沸き起こる、風景が見えてくる、その状態で自分をコントロールする訓練こそが、
舞台の実践の技術に繋がります。

欧米ではツェルニーがあまり使われないのは、そんなところに理由があるのだと思います。



ショパンが言ったように、音が生まれる前には必ず「想い」があります。
バッハの音にも、宗教的な意味がありました。
モーツァルトもそれやオペラの台本を元に音を生んでいます。
それらバッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ショパン、ラフマニノフ
などなどを練習していて共感し、感銘を受け、涙が出ることはあっても
ツェルニーを弾いていて涙が出ることはなかなかないでしょう。。
それは、「思想」を元に作られたものではないからです。

英語を、意味や感情・使う状況をイメージせずに、ただ繰り返し発音しても、
実際の会話の場面で、単語が口から出てくることはないですよね、、。
発音はきれいだけど、会話にならないロボットのようになってしまいます。

そのような曲に何時間も何年もかけることは、想いのない音に平気になってしまい、
音に対して、弾くことに関して、鈍感な感性をどんどんと育んでいるようなものです。。

シューマンは、「天才のないものには触れてはいけない」と言っていますが
私もその通りだと思っています。
ですので、ツェルニーを使う時は、他の曲とのバランスも大切になります。


またツェルニーが弾けても、ショパンのエチュードが弾けない人はたくさんいると思います。
それは、ショパンのエチュードは、ツェルニーの延長線上にないからです。
(ショパンが練習曲として使ったのは、バッハやクレメンティでした。)
ツェルニーのテクニックでは、ショパンのエチュードを弾くのはしんどく、また、音色の乏しい演奏になってしまいます。
運動神経の回路も少し違います。

ですので、ツェルニーをするにあたっても、最初からショパンやラフマニノフのエチュードを弾く想定で
そのための指のおろし方と腕の使い方をマスターしていかなければ、
ただツェルニーの曲数をこなしても、時間ばかりを使ってしまうことになります。
(ツェルニーのテクニックは、ベートーヴェンやメンデルスゾーンくらいまでなら通用します。)

そして、初期の段階では、その基本的な体や耳の使い方・音楽感、音楽語法を習得することが大切で、
実際に指をしっかりさせて行くのは、歯が全て生え変わった年齢の頃からです。
それまでは子どもは骨が柔らかいので、骨がしっかりしてからの方が効率的ですので
その他の音楽的な基礎や、耳を育む方に時間が注がれます。



もちろんこれらは、教える人によって違います。

勉強をするにも、かならずこの教科書でないといけない、
ということはないように、要は、
「何を学び、どんな内容を身につけるのか、その曲の目的は何なのか」
を説明してもらいながら、毎回その目的を達成しながら取り組むことが
大切だと思います。

ツェルニーを使っても良いですし、ケスラーやクラーマービューロー、モシュコフスキーなど、
ツェルニーにかわるエチュードもたくさんあります。
ツェルニーでなければ、と思い込む必要はないと思います。


人は一人一人脳の性質が違うので、マニュアルはないもの。
その人だけに合う方法があります。
ご家庭も全く違うので、生徒によって見守る内容・声のかけ方・進度・順序も、全く異なります。
それを指導者が観察してゆくことだと思っています。



最後に、シューマンの言葉をご紹介。

音階やその他の運指法はもちろん熱心に練習しなければならない。
しかし、世の中にはそれで万事が解決すると思って、大きくなるまで、毎日何時間も、機械的な練習をしている人が多い。
けれども、それはちょうどABCをできるだけ早くいえるようになろうと思って、毎日苦労しているようなものだ。
時間をもっと有効に使わなければならない。


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